オレンジクラウンの加工とそれにまつわる雑学のまとめです.
2025年現在,ミニ四駆で主に使われているクラウンギヤには2つの形状があり,1つはVZシャーシなどで使用されているピンクもしくはブラックのクラウンギヤ(G22),もう1つがFM-AシャーシやSXシャーシで使われているオレンジのクラウンギヤ(G20)があります.この記事ではオレンジのクラウンギヤ(G20,以下オレンジクラウン)の特徴とそれに関する雑学,私が行っている加工についてまとめました.
①オレンジクラウンの特徴と雑学
オレンジクラウンの歯先の形状を再現したものが下図になります.図の通り,オレンジクラウンの歯は中心から放射状に一定の形状であることが確認できます.
次に,同じサイズでプロペラシャフトのピニオンギヤが回転した際に触れる箇所のみを取り除いた歯形のクラウンギヤが下図のものになります.潤滑や外乱の影響を無視した場合,下図の形状が最も伝達効率が優れた形状だと考えられます.なお,こちらのモデルは武内先生の公開されている「Fusion360歯車スクリプト」を用いて生成しました.
こちらの歯先形状を確認すると頂点の形状は内側が鋭利な五角形となっており,内側は少し欠けていることが確認できます.これは歯のかみ合い開始と終わりの位置におけるピニオンギヤとクラウンギヤの歯面のなす角の影響だとかんがえられます.下図になす角が小さくなるようにクラウンギアの外径を大きくした際の理想形状を示します.下図から,なす角が小さくなるような条件下ではオレンジクラウンのような内側から外側まで形状が一様な歯形に近づいていることが確認できます.
最後に理想形状のクラウンギヤとオレンジクラウンの形状の違いによる影響について考えると,効率の低下や損耗の助長が挙げられます.オレンジクラウンの歯形では理想形状に比べてかみ合い開始と終わりの位置にて過剰に干渉する恐れがあり,この場合,不要な力の作用によるプロペラシャフトのバタつきによる効率低下や歯面への損耗の助長の恐れがあります.また,これを回避するためにクリアランスを増した場合,かみ合い率の低下を招き,結果的にこちらも効率低下の恐れがあります.また,歯面同士のなす角の大きさに伴って歯面同士の接触面積が低下するため,応力集中による歯面の損耗を助長する恐れがあります.
②オレンジクラウンの加工
オレンジクラウンを使用する際は軽量化を目的として歯先を歯幅の半分程度から内側に向かって45度を目安に面取りをするようにしています.軽量化を目的とする理由は2025/10/27現在ではタミヤのレギュレーションにおいて「軽量化のための穴あけや削り加工とベアリングの内蔵」以外は認められていないためです,注意してください.歯先を加工すれば重量が減って車体の軽量化が期待できます.
上記の加工をするとあくまで結果的にですが,上述の理想形状のように内側の歯先が切除されるため,かみ合い開始・終わり位置における過剰な干渉が低減でき,クリアランスをうまく調整できれば伝達効率の向上が期待できます,あくまで結果的にですが.
また,未加工のオレンジクラウンを使用する場合もあります.それは,プロペラシャフトのピニオンギアが摩耗し,下の写真のような状態になった場合です.
この場合は,プロペラシャフトのピニオンギアが軽量化されているためクラウンギヤまで軽量化する必要はないだろうという考えです.また,結果的にですがプロペラシャフトのピニオンギアが窪んでいるため過剰な干渉の恐れはなくなります.むしろクラウン側も加工していた場合,接触面が不足することによる伝達ロスや故障の恐れが出てくるため未加工の方が相性が良い気がします.まとめて交換しても良いのですが感触としては悪くないためこのように運用することが多いです.
おわりに
オレンジクラウンに関する知識や考えてること・実践していることについてのまとめでした.後半は大人の事情により少しふざけた文章になってしまいましたが察していただけると幸いです.加工品と未加工品で比較検証までは実施できていませんが運用したうえでの故障の頻度や空転時の具合,走行時の駆動音などから今の具合に落ち着きました.クラウンギヤ単体でどうこう言うのは難しいですが奥深い要素なのでオレンジクラウンを使用している車体を長く使われる際はぜひ一度検討しても良いかと思います.
また,以前は上記の加工をリューターと超硬スクレーパーでやっていたのですが久しぶりにやったところ加減などを忘れているせいもあって失敗することも多かったのでオリジナルツールを作りました.
・BASE:ヤネウラ・クラフト
関連記事・動画:
・お勧めのFusion歯車スクリプト「Study_Gears」:ヘリカルギヤ、クラウンギヤ、ベベルギヤ対応,歯車のハナシ,リンク