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走行ラインとセッティング

走行ラインの違いと狙った走行ラインを走らせるためのセッティングについてのまとめです.

ミニ四駆はコースに沿って走るものですが,厳密には115mmの幅のコースに対して最大でも105mmのローラー幅で走るため両側の壁に触れて走行しているわけではありません.そのため,セッティングによってはコースの中で右往左往したり沿う壁面が変わることでコースの中で走る軌跡が変わることがあります.このコースの中で走った軌跡をこの記事では”走行ライン”と呼んでいます.

私が走行ラインが異なる影響に注意しているセクションは以下の4つになります.

 (a)つなぎ目に段差のあるスロープ
 (b)コーナー直後のスロープ
 (c)長い直線の後のスロープ
 (d)3レーンの立体レーンチェンジ

(a)「つなぎ目に段差のあるスロープ」については,ミニ四駆のコースはいくつものセクションを組み合わせて設営する都合でセクションとセクションのつなぎ目に段差が生まれることがあります.このような段差がスロープセクションとその手前のセクションのつなぎ目にあった場合,その壁面に走行ラインをとるとマシンが弾かれてしまい,斜め前方に飛ぶことでコースアウトの危険性が高まります.そのためこのような段差が確認された際には反対の壁面を走行することで攻略することが可能になる場合があります.

比較的段差がない設営状態

次に(b)「コーナー直後のスロープ」については,一般的な前後のローラー幅を最大近くで揃えているセッティングでは経験的にコーナー直後は外側から内側に向かって走行ラインをとる場合が多く,そのままスロープセクションに突入してしまうと斜めに飛んでしまうことがあります.下のポストは,その一例になります.


(c)「長い直線の後のスロープ」については,(a)や(b)のように直前に何らかの要因で斜めを向きやすいわけではないのですが,それ以前のセクションや設営の影響で右往左往したり,また速度が高い傾向にあることも相まってコースアウトする危険性があります.

(d)「3レーンの立体レーンチェンジ」については,レーンチェンジでは前半の上りの過程においてしっかりと右前のローラーを当てることでダウンフォースを得ることが重要になってきます.しかし,レーンチェンジに進入する際に左前方に向かう走行ラインをとってしまうとローラーを右の壁に押し当てるタイミングが遅れ,十分なダウンフォースを得られず,その結果としてコースアウトの危険性が高まります.特に下の写真のような右コーナー直後のレーンチェンジはその影響が受けることが多いです.


上記の通り,主なコースアウトセクションである立体セクションとレーンチェンジで影響があるため,コースの攻略を考える際にどのラインを走らせるか具体的にイメージするようにしています.

以降では,狙った走行ラインを走らせるための3つのセッティング方法について説明していきます.

①ローラー幅

前後のローラー幅を変えることで主にコーナー直後の走行ラインを変えることが出来ます.

前述の通り,経験的に前後のローラー幅を最大近くで揃えているセッティングではコーナー直後は内側に向かって走ることが多いです.そこで,外側の壁に沿って走行ラインをとりたい場合には外側前方のローラー幅を狭くすることで車両のコーナー直後の向きを外側に向けることが可能になります.具体的にはローラー幅を最大近くでセッティング可能な穴位置で元のローラーより径の小さなローラーを取り付けたり,内側にある大きなローラー用の穴位置にローラーをつけ替えることで変更が可能です.また,反対に早く内側に向けて走らせたい場合には,外側後方のローラー幅を狭くすることで可能になります.下の写真は左前のローラーを13mmの穴位置に11mmの物を付けた時のセッティングになります.


このセッティングは直進時の右往左往も低減する効果もありますが高速域などでは壁面接触時の衝撃により反対側の壁に向かって走行ラインを変えてしまうこともあるので,そのような場合には以降の2つのセッティングで調整するか組み合わせることが必要になってきます.

また,注意点として,過度に前後の幅を変えてしまうと壁面に沿って走ることは可能になっても,タイヤがコースの向きに対して外側を向くことになるため,スロープなどで飛び出した際に外側へ飛んだり,飛ぶ際にローラーが強く押し当てらることでロール方向に姿勢を崩す危険性が大きくなります.

②スライドダンパーの硬さとストローク

スライドダンパーの硬さやストロークを調整することで,①と同様にコーナー直後での向きを変えることが出来るほか,直進時の右往左往を低減することが可能です.


具体的には,コーナー直後に外側に走行ラインをとりたい場合や直進時の右往左往を低減させたい場合にはフロントのバネの硬さをリアよりも柔らかいものにします.このようにすることで旋回中は最大まで可動しなければ①のフロントのローラー幅が狭い状態と同じ状態になるため同様の効果が得られます.

注意点としては,グリスを塗ることで元の位置に戻るまでの時間がかかるようにすることです.グリスを塗らない状態ではすぐに元のローラー幅に戻ってしまうため効果が得にくどころか,リアのローラーがまだコーナーにある地点などでは一時的にリアよりもフロントのローラー幅が広くなってしまうことで逆効果になってしまうこともあります.また,グリスの硬さを前後で変えることは個人的にはあまりお勧めしません.戻るまでの時間を稼ぐという点ではより硬いグリスを使用することも有効なのですが,縮む際にも影響が出るため条件次第では前のローラー幅の方が広い状態になる可能性があるためです.

また,最大までストロークする場合にはストロークに制限を加えることが有効です.具体的には,コーナー直後に外側に走行ラインをとりたい場合にはフロントのストロークに対してリアのストロークを狭くすることで,最大まで可動した際のローラー幅を前後で異なるようにすることが出来るため,前述のセッティングと同様の効果が期待できます.

これらのセッティングは,タミヤから販売されているスライドダンパーでも可能ですが,下の写真のような自作した左右でそれぞれ別のバネを使うスライドダンパーを用いると左右の壁に対してそれぞれ異なる動きを実現可能なるためセッティングの幅が広がります.


私が公式大会などで調整する際のは,黒バネとスライドダンパーグリスセットのエクストラソフト(青色)を基準にし,硬くしたい側(広くしたい側)を金バネもしくは銀バネに変更したり,ストロークを制限したりします.ストロークを制限する際には,ビスなどを隠す際に用いるゴムパイプを適当な長さに切り,制限したい量に応じてゴム管を割って挟むことで調整しています.


また,スライドダンパーに限らず,ピボットバンパーやアンカーと呼ばれる機構などでも同様のセッティングが可能ですが,前後の関係を把握しやすいという点では前後スライドダンパーの構成が比較的セッティングがしやすいと思います.

③タイヤ径

左右のタイヤ径を変えることで任意の壁面に向かって走るようにすることが出来ます.これは同じ回転数で回った際に,左右でタイヤ径が異なると左右の円周の長さの違いから径が小さい側に向かって旋回するような力が働くためです.そのため,前の2つと異なり,直進時にも狙った側へ走行ラインをとれるようになります.

注意点としては,駆動系が常にコーナーを走っている状態と同じような抵抗を受けることになります.また,タイヤ径を左右で変えているため車体が常にロール方向に傾いているため,ローラーの触れ方やブレーキの触れ方が変わります.体感的にはローラーについてはあまり大きな影響がないように思いましたが,リアのブレーキプレートは傾いているとスロープなどで飛び出す際に姿勢を崩しやすくなるので,ブレーキの付根に片側だけワッシャーを挟むなどしてブレーキは水平に保つようにしてください.

私が公式大会などで使用していたタイヤは左右で直径が0.5mm程異なるようにしておき,片側にだけマーキングすることで,前後で左右の大小関係を間違えないようにしていました.


おわりに:

この記事の内容はタミヤの主催する5レーンのコースでの公式大会に参加し始めたころ,先人の方から教えていただいた内容がもとになっております.この場を借りて深く感謝申し上げます.この記事で取り上げた内容はよく公式参加に参加される方の間では認知されている内容だと思いますがネット上での解説記事がほとんど見当たらず,私が公開しても良いものなのか葛藤があったためまとめておりませんでした.しかし,最近になって関連記事にリンクを貼らせていただいた動画などでも解説されることも出てきたため記事の作成,公開に至りました.自分自身もこのあたりのセッティングをうまく使いこなせているかについてはまだまだ課題がありそうですが,わずかながらでもこの記事を読んでいただいた方のお力になれたら幸いです.

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更新履歴:
・2025/8/14:文章校正
・2020/12/19:公開